2011年7月28日木曜日

1分半の人生

July, 28、2011
Tokyo, Japan

1分半の人生

最近旅の準備でバカみたいに忙しくて、なかなかブログを書く時間はなかったけど、書きたいことはいろいろとあるので、とりあえず今日は一つだけ書くことにします。1ヶ月くらい前の出来事で、リアルタイムのブログじゃないんだけど、まあ、書かないよりはいいだろうということで勘弁してください。

6月の後半か7月に入って間もない頃。試合が控えていたので、空手の練習を休んでいたが、後輩のシャドー(仮想組手)を見ていた。空手では通常2分、または3分動き切ることを目標にするが、この日も後輩が2分間、できるだけ早く手足を連動させていた。

最初の30秒は難なく素早い突き蹴りを繰り出していた。そして、残り1分半というところで、ふと思った。1年間を1秒に置き換えるなら、人は大体何秒生きるだろうか、と。僕は長生きしたいと思っているし、家系もそれなりに長寿で、なにより長生きできる自信がある。せめて、90歳になれる自信を持っている。そうか、人間の人生を秒数で上げるとすれば、長生きする人は大体1分半生きるのか……。

祖母は、今年で90歳になった。いろんな親戚が遠くから来てくれて、僕自信も日本から祖母の祝いの席にもちろん出席した。祖母とはもう普通に会話ができないし、精神的に少しおかしくなっているが、いつも明るく微笑んでくれるし、身体もまだ健康らしい。

いつのまにか、時間は残り1分20秒になっている。80歳か……。祖母の80歳のお祝いの席が、ついこの間のように思えなくもない。10年って、人の一生においては、以外と短いものなのだ。

残り1分10秒。後輩の疲れはまで見られない。この歳で、私の祖父が癌で亡くなったんだったな~…。その頃、僕はまだ7歳か8歳くらいだった。

そして、その2秒後に、もう父親の歳が訪れる。父親はもう若くない、と改めて実感した。

「残り1分!」60歳か…。父親が60歳だった頃、僕はとにかく日本へ行きたくて仕方ない15歳のガキだった。

母親の今の年齢も、そのほんの数秒後にある。父親と12秒しか変わらないが、それでも1分を切っている以上、全然違う気がする。

そして、そこからは僕の知っている人の年齢が続出してくる。空手の先生や、友人の親とか、好きな小説の登場人物も。

残り43秒。僕にとって、この数字の意味は大きい。自分が生まれたときの父親の年齢である。父親の今の年齢の秒数とは、以外と差が大きい。そう考えると、僕が生きている時間も、以外と長い。

「ラスト30秒!」と後輩に声をかける。30歳で、僕にとって大切な人がいる。空手で、30秒は最後の一息のようなものだ。そう考えると、30歳もまだまだ若い。

その6秒後に、いよいよ僕の年齢がある。24歳。確かに最後の一息だが、空手の試合なら24秒があればまだまだ逆転の可能性は充分にありえる。もうガキではないのだ。

23,22,21,20。時間がどんどん減っていく。この頃、僕は空手の練習に明け暮れていたな……。

19。大学に入ってまもない初々しい日々。

18、17。予備校に通いながら、都内の高級ホテルでアルバイトをしていたっけ。

16。富山県での高校留学生活、懐かしいなあ…。

15。この年の夏、初めて日本に行った。たったの15秒か……。試合ならもうラッシュをかけている。

14,13。オランダの中学校で悪がきになってみたり、恋に落ちてみたり。

12,11。僕にとっての黄金時代。小学校の最後の2年間はとにかく楽しかった。もう一度あの頃に戻りたい。

「ラスト10秒!」 人生はもう、ほとんど終わっている。

9,8。素晴らしい少年時代が思い出される。近所の友達と公園でサッカーをやったり、家でひたすらテレビゲームをやったり、校庭でビー玉で遊んだり。

7。この年に、愛犬のフロールを飼った。

6,5。時間はもうほとんどない。頑張れ後輩!ラッシュをかけろ。でも、実はお前のことなど見ていない。自分の過去を振り返っているだけだ。6,5歳の頃の記憶はまだ鮮明に残っている。憧れの年上のニッキーという友達にもう一回会ってみたいものだ。5歳の誕生日にファミコンを買ってもらったのも、まだ覚えてるよ、お父さん。

4,3。もう記憶はほとんどない。幼稚園で大泣きしてた記憶が呆然とのこっているだけ。

2,1,0! 1987年4月30日、私が生まれる。そして、誰かが死ぬ。

さようなら。

2011年7月1日金曜日

好き屋の牛丼! 美味しく? 安く?? 早く???

June 30, 2011 Tokyo

好き屋の牛丼! 美味しく? 安く?? 早く???

先週の平日の夜11時、彼女と好き屋に入った。以前に聞いた話しだが、好き屋の夜は基本的に二人体制らしい。一人は裏で熟睡し、もう一人は表で仕事をする。急にお店が混んだりした場合、裏で寝ている人が起こされることもあるらしい。
 お店に入った時点で、僕ら以外にお客は誰もいなかった。所々に下げられていない食器が残っているのには気がついたが、特に深くは考えなかった。
僕はうな丼、彼女はおろしポン酢ハンバーグ定食を注文する。見るからにだるそうでやる気のない店員は注文を取り、調理場に入っていった。
しばらくすると、思い出したように冷たいお茶を出してくれた。コップの半分までも入っていないが、そこは特につっこまない。せめてピッチャーを置いていってくれればいいが、そこまでは気が効かないし、そもそもあのやる気のない表情じゃ、そこまでのサービスに期待したこっちに罪がある。
 店員が再度調理場に入っていくと、4人組のおじさんたちが入店する。
店員は「っしゃいませっ」と省略できる音を極力省略して、なるべく声に負担がかからないように挨拶はするが、注文を取ることもなければ、お茶を出すこともない。
 料理が出るのはいくらでも遅いんじゃないかな、とそろそろ気付き始める。うな丼なんて、ご飯の上にうなぎを乗せるだけだから、ここまで時間がかかるとは考えにくい。
尋ねてみると、彼女も同じことを考えていたらしい。少なくとも10分は待っている。
 もう二人、今度は男女のカップルが店に入ってきた。相変わらずお客様らしい扱い方はもちろんされないが……。
 店員が再びやってくると、ようやく料理ができたのかと思ったが、のん気な表情といい、手に何も持ってないという事実といい、どうやら違うようだと認めざるを得ない。
 そろそろ新しく入った客の注文を取ろう、という気になったらしい。4人のおじさんたちはみんなただの牛丼。さすが気が効く人の注文だ!ここで季節限定のなんとか炒め定食を頼むと、のん気な店員を困らせてしまうのだ。男女カップルの注文までは聞き取れなかったが、おそらくは彼らも気の効いた注文をしたに違いない。
「お茶はもらえないかな?」と待ちくたびれたおじさんたちは聞く。
「はい、今もってきます」と罪のない店員は、特に申し訳なさそうにすることもなしに言う。言うまでもないが、コップは相変わらず半分も入っていないし、男女のカップルの分まで持ってくるほど気はもちろん効かない。
 待ち時間はそろそろ20分代に突入しょうとしている。いくらなんでも、うな丼にそこまで時間をかける人は他にいないだろう。とても丁寧に乗せているに違いない。のん気な店員世界選手権に出場できることはおろか、優勝までしかねない。
20分ちょっとして漸く料理が運ばれてきた。彼のタイムを超すことのできる店員は、この世界のどこかにいるだろうか?
だが、どんぶりがテーブルの上に置かれる前から不吉な予感はしていた。
「お待たせしましたぁ~」というちっとも申し訳なさそうな店員のかけ声のせいである。
どんぶりがドンとテーブルの上におかれると、予感が当たったことが判明する。なぜか、うなぎの上に白い液体らしいものが乗っている。
「……えっ?」と思わず呟いてしまう。
どうやらとろろらしい。
「とろろ乗せのうな丼は頼んでないんですけど?」
店員がそれを聞くと、さすがに慌てたらしく、どんぶりを手に取り、調理場に戻っていった。何も乗っていないお盆は見事にテーブルに置き忘れられている。
 その後に、彼女のおろしポン酢ハンバーグ定食が運ばれた。……と言いたいところだが、こちらには余計に何かが乗っかっているのではなく、おろし大根が欠落している。
 だが、さすがの店員はそれに自ら気がついた。
「あっ、おろしポン酢ハンバーグ定食でしたよね?」と。
「……はい……」そもそも、それ以外のハンバーグ定食は好き屋にないはずですけど?
 店員はすぐに戻って来て、器に入ったおろし大根を持ってくる。今日のおろし大根はセルフサービスらしい。
 調理場に戻っていった店員を心配そうに振り向くと、とろろ乗せのうな丼を全部ゴミ箱に捨てる姿が見える。とろろだけをとってくれればよかったのに。同じ値段でよければ、それを食べてもよかったんだし……。もったいない!と思わず思う。だが、サービス好きな店員は1から作り直す気でいるらしい。さっきより少しでも早く作ってくれると助かるのだが……。
 そして、その期待に見事に答えてくれた店員は、本の数分でとろろ抜きのうな丼を持ってきた。これが本来の好き屋のスピードだ。やればできるじゃん!と思わず褒めそうになる。だが、同時に、今までの遅さは一体何だったのだろう、とさらに疑問が増える。
「僕らが店を出るまでの間、他のお客さんの料理は来ると思う?」と彼女に聞いてみる。怪しい、という結論に至る。
 自分の食事よりも、慌て始めた店員の方に気持ちがいく。まるで食事しながら面白いテレビ番組を見るような気持ちで、うなぎを箸で口元に運びながら、店員の一つ一つの動きを見る。さあ、牛丼四つを、いかに遅くしてくれるだろうか?と期待が膨らむ。
ところが、気がつくと店員はいなくなっていた。いやになって、逃げたんじゃないだろうか? そこで好き屋の夜の体制を思い出す。そうだ、そろそろ仲間を起こしに行ったに違いない!可哀そうな仲間。気持ち良く眠っているところを起こされると、お店が余程混んでいると思うに違いない。ところが、表に出ると、なんと3組しかいないという切ない事実を知らされる。
 店員が仲間を連れて店に戻って来た。どうやら、僕の推測が当たったらしい。大して混んでいないのに起こされた仲間は、落ち着いたらひどく怒るだろう。だが、よく見てみると仲間もやる気のない、面倒くさそうな顔をしている。これはスピードが上がるとはちょっと考えにくい!
 最後の米の粒を箸で丁寧に一か所に集めている頃に、四つの牛丼が漸くおじさんたちの手元に届いた。これも見事なタイムで、15分は間違いなくかかっている。だが、文句をこぼすおじさんは誰一人いない。優しい人でよかった。
 お茶をもうとっくに飲み干したおじさんたちの一人は立ち上がり、調理場の近くに置いてあるピッチャを手に取る。
「これ、テーブルに持ってっていいかな?」と一応丁寧に店員に声をかける。
「あっ、いいですよ」と、店員はもちろん申し訳なさなんて一切口調に含めずに答える。
僕らが食べ終わって、レシートをレジの方へ持っていこうとすると、男女のカップルの料理もついに届いた。なんと、牛丼にチーズが乗っている!そんな複雑な料理は、時間がかかるのも仕方ない。なんせ、米に牛肉を乗せるだけでなく、チーズも乗せなくちゃならないんだから……。
レジまで行く途中に目にする置きっぱなしの空いたグラスやどんぶりはもちろんまだちゃんとそこにあり、当分下げられることもないだろう。
 とりとして、店員はとんでもないジョークを残してくれた。何かというと、1040円の料金を5000冊と50円玉で払うと、お釣りを10円しか返してくれなかった。レシートにもしっかりと、お釣り10円と書いてある。
ちょ、ちょっと!!さすがにそれはやりすぎだろ!と店員を睨むと、あきれたように残りの4,000円も渡してくれる。さすがに気が効く!
お店を出ると、彼女が僕に言った「今度好き屋に入ってあの二人がいたら、やっぱり帰りますって言いようね!」と。
うん、と思わず頷く。

 最後に、このお話は嘘偽りない真実であることを誓い、本日のブログを終わりにしておこう。

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