2011年10月10日月曜日

カオス列車

October 9, 2011. Written in Luoyang, China.

カオス列車

 西北京駅から洛陽方面の夜行列車に乗った。西北京駅といえども、北京駅よりもさらにでかい。まだできて間もない駅で、地下鉄もまだ通っていないため、バスかタクシーで向かうしかない。
そんなわけで、宿で知り合った59歳のチェコ人と二人でバスに乗った。チェコ人男は列車に乗るわけではなく、場所を知っておくためについてきたのだった。バスの中で、25歳の長身の中国人男と出会った。まだぼったくり事件から完全に回復したわけではなく、中国人と会話するときは常に警戒しているが、いい人であるとわかり、気をつけながらも親しく接することにした。彼は僕と同じ洛陽に向かうわけではないが、途中までが一緒なので、同じ列車の切符を買うと言って、一旦別れた。

 その間、僕はチェコ人と電車乗り場を確認してから、駅前の「餃子館」に入った。店員は外国からの来客を大層嬉しく思ったろしく、あれこれ料理を売りつけようとした。2人前を適当に頼むよ、あと餃子も食べたいと言っておいた。餃子に関しては、日本語の発音「ぎょうざ」を中国人の訛りっぽい口調で言ったら伝わった。

 1分も待たないうちに、料理があれこれ運ばれてきた。しかし、2人前ではなく、5人前といっても過言ではないくらいの量だった。チェコ人の笑いが止まらなかった。
「ノーノー!Too much!」と言って、ほとんどの料理を下げてもらった。残ったのは水餃子と鶏肉の炒め物と牛肉の炒め物だった。期待していた餃子よりも、炒め物の方がよっぽどうまかった。


 チェコ人と別れた後、電車乗り場に戻った。電車は30分くらい遅れているようだ。人であふれていたが、トイレから出てくるとバスで出会った中国人とでくわした。
「いやあ!待ってたよ。どこにいたの?」と彼は言った。
座席が残っていなかったらしく、彼は立ち席を買わざるを得なかったらしい。だけど君の膝の上に座らせてもらうから心配ないよ、と彼は笑って言った。本気なのか冗談なのかはわからない。
 彼は恋人に電話をかけ、楽しいのか面倒くさいのかよくわからない口調で長いことしゃべった。いよいよ電話し終わった頃、乗車できるようになり、長い列ができた。これだけの人たちは本当にみんな電車に乗れるのだろうか?


 25歳の彼は僕と同じ車両に乗り、僕の膝の上にこそ座らなかったが、4人席に囲まれているテーブルの上に座った。そのことを見て嫌な顔をした人など一人もいなかった。そもそも、同じようなことをしている人がちらほらいる。僕の迎え側に座っていた若い男とも仲良くなり、3人で話した。二人ともそれなりに英語ができるので、基本は英語で会話したが、わからない言葉があったときは紙に漢字を書いた。本当に漢字って国際性のある文字だな、と中国に来てつくづく思う。発音記号として機能する文字は、同じ言葉がしゃべれるもの同士でないとまず理解し合えない。だが、同じ話し言葉の知識がまったくなくても、意味を持つ文字があればなんとかコミュニケーションできる。アルファベットにはない国際性であり、可能性である。もし英語も漢字化されたらどうなるんだろう、とときどき思う。日本語みたいに、アルファベッドをひらがなのように使えばいい。たとえば「あなたは家の前に歩いていた」を"貴方 歩ed in 前 of the 家" として成り立つのではないか? 考えすぎだろうか?
 それはそうと、3時間くらいすると、僕の新しくできた二人の友人が列車を降りた。最後まで彼らと警戒しながら接したことが今になって少し申し訳なく思った。二人はただ仲良くしたいだけで、何も悪意はなかった。それなのに最後まで僕に警戒されていた。だが、それは僕のせいではない。それが僕を騙した、あの女のような人たちのせいだ。そういう人がいる限り、旅人は現地の人に完全に心を許すことができない。悲しい事実だが、仕方ない。


 一人になっても眠ることはできなかった。外は真っ暗だし、何もすることがないので、ひたすら読書していた。たまには本をおいて、前をぼおっと眺めるときもあったが、そうするといろんな人がまったく無遠慮に僕の本を手に取っては、ひらひらとページをめくってしまうので、再び手に取るとどこまで読んだのかがわからなくなるのだった。

 出発してから11時間、朝の8時頃に洛陽に到着した。さあて、どのような冒険が待っていることやら。

0 件のコメント:

Total visitors