March 1, 2012. Written in Kunming.
台湾よ、さらばだ
基降の港に到着したちょうどその一ヵ月後、同じ基降から台湾を離れることになった。台湾に滞在して一ヶ月。本当にいろんなことがあり、たくさんの出会いもあった。こんなに寂しい気分になったのは、旅して初めての経験だったのかもしれない。港町の美しい夕焼けを眺めながら、重いバックパックを背負って、夜のフェリーまで街をふらふらしていた。到着した日の基降は空が曇っていたが、今は真っ青で、とても綺麗な街として僕の目に映った。
ちなみに、僕が一ヶ月前に来たフェリーはメインテナンス中で2月中は運行しないということで、もう一つのフェリーで中国に帰ることになった。このフェリーはまず台湾の馬祖島へ行き、そこからさらに中国の福州へのフェリーに乗り換える。
前回乗ったフェリーとは違い、このフェリーは作りが大分古く、観光客はおらず、軍人や職業者がほとんどだった。
出港すると、上のデッキから去ってゆく基降の町を眺めた。さようなら、台湾。
いかにも船にありそうな木製の小さなベッドに入ると、急にものすごい疲れを感じ、ぐっすりと眠った。翌朝起きると、あと数時間で到着するところだったらしいが、霧は完全なる支配者が如くすべての景色を丸ごと隠していた。それでも、まだかまだかと、首を長くして見ている職業者が不思議なほどにたくさんいた。
9時半ごろに馬祖に到着すると、中国へのフェリーに乗るまで数時間あったが、馬祖にはあまりにも何もなく、数分ぶらぶらした後にもう観光する気をしっかりとなくし、代わりにネットカフェで時間を過ごした。
12時間もかかる基降から馬祖へのフェリーと違って、馬祖から福州までのフェリーは本の2、3時間だった。馬祖は台湾よりも中国の大陸に近い。船もかなり小さく、フェリーというよりはちょっとしたボートといった方がよいのかもしれない。本当にこれくらいの大きさの娯楽ボートを持っている人がいるんじゃいないかと思う。
それはそうと、この船である中国人に話しかけられたが、彼は4年間カナダで留学していたらしく、中国に戻ってきたばかりだという。カナダの国籍を取り、法的に中国人でなくなった彼は普通の外国人と同じようにビザを取得しないと国に入れない。そのために、ビザが切れる度にこうしてフェリーで台湾の馬祖へ行って、同じ日にまた戻ってくるらしい。帰化しても良いことばかりではないわけだ。だが、カナダ人になっていろんな国へ自由に旅行ができるようになった彼はやっぱり得したと思っているらしい。ちなみに、彼はなんとカナダで極真カラテをやっていたらしく、あまりの偶然に驚いた。これを一期一会というのだろう。
福州に到着すると、彼は私を駅まで送ってくれた。良くも悪くも中国へ戻ってきた感じがした。中国にはいろんなことがあったが、3ヶ月も滞在したわけで、なるべく早く東南アジアへ行こうと決めていた。
とりあえず、前回まだ行っていなかった上海へ行こうと思っていたが、その日の電車はもうなく、翌日まで待たなければならないことになった。
誰も知らない中国の都会。観光地も何もないからユーズホステルもないわけだし、外国人なんてまず見かけない。多くの人が町を行き来し、叫び、唾を吐き、クラクションを鳴らす。これぞ、本当の中国。安めのホテルを見つけ、広がる寂しい夜の街を窓越しに眺めた。早く上海へ行こう!
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