2011年9月10日土曜日

書評『ケインとアベル』

September 10, 2011. Written in Seoul, South Korea.

書評『ケインとアベル』ジェッフリー・アーチャー著


注意:なるべくネタバレのないように書くし、結末などももちろん言わないが、この作品を取り上げる以上、多少の情報を漏らすかもしれないので、これから読みたい人は注意して読んでください。








『ケインとアベル』はまったく異なった環境に育った二人の男のそれぞれの一生を交互に取り上げる作品で、二人の対立が見事に描かれている。だが、この作品はすべて二人の対立に向かっているだけではない。二人のそれぞれのエピソードの一つ一つは巧みに描かれており、続きが知りたくなるようにできている。ご都合主義に感じたり、できすぎたりしているように思えることも多々あるが、それでも感動的なエピソードや結末に感動せざるを得なかった。

文章も魅力的であり、わざとらしい表現などなく、すべてありがままに描写されており、人々の感情も素直に、本物らしく感じる。その意味では、トルストイの『アンナ・カレーニナ』を思い出した。『アンナ・カレーニナ』では150年前のロシア社交界を本当に体験しているような気分になるが、同じように本書では、100年前のポーランドやアメリカの人々と共に生きているような錯覚にとらわれる。
また、歴史的な出来事に触れながら発展する本書は非常に勉強になった。特にアメリカの近代史のほぼすべての重大な出来事は登場し、主人公たちのそれらとの関係も描かれている。登場人物たちがどのようなときにどんな悩みを抱えていたのかがわかり、更なる感情移入ができるようになる。

私の唯一の批判は、以前にも述べたことだが、物語が多少できすぎていることである。特に一つの、物語において重大な意味を持つ出来事は、極めて作られたように感じ、人々の感情があれだけ本物らしく描けているだけに残念だった。

かなりの長編だが、巧みに描かれた切ないストーリーを楽しみたい人にはかなりのおすすめ!

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