2012年1月6日金曜日

フランスのクリスマス・イヴ

January 6, 2011. Written in Hong Kong.

フランスのクリスマス・イヴ

泊めてくれているフランスのNくんの恋人を除けば、今年はフランス人の群れとクリスマスを過ごすことになった。香港でのフレンチなクリスマスということだが、どんなものか楽しみにしていた。フランスの彼らは、家族から離れたところでのクリスマスは今回が初めてらしいのだが、高校時代の仲間同士で祝えるのも悪くないと思う。

僕はクリスチャンじゃないし、クリスマスに対する執着は皆無なので、彼らの気持ちを理解するなんて到底不可能だが、クリスマスをそこまで大切に思っている彼らってやっぱりヨーロピアンだなと思った。その意味では、僕はもうヨーロピアンじゃないし、そもそも最初からヨーロピアンではなかったのかもしれない。

ってなわけで、クリスマスに対してこだわりなんてまったくないので、すべてを彼らに任せた。フランス式のクリスマスが体験できるのも、今回限りだろうということで。しかもこの香港の地で!ぶっとんでいて大変結構ではないか、と。

昼間は路面電車で街の中心にある高級フランス料理屋まで行った。食べにいくためではなく、バゲットを分けてもらうためだ。フランス人の味覚に合ったバゲットは、そこでないとこの香港にはないらしい。ソウルでも見たけど、アジアでバゲットをわざわざ買いにいくフランス人はさすがだなと思った。これはぜひぜひ記念写真を撮らなくては!今後、運がよければ各国の「バゲットを購入するフランス人」の写真集ができるのかもしれない。とりあえず韓国と香港は無事クリア!
 4ヶ月のアジアで生活した後の本格バゲットを手にしたPくんは本当に幸せそうだった。

夕方家に戻ると、みんながそれぞれ持ってきたフレンチチーズやらフレンチソーセージやら赤ワインなどを取り出し始めた。遠いところから、よくもこんな臭いものを持ってきたな。それなら、僕も納豆を持ってくればよかったのではないか!
フランスのクリスマスは、本来フォアグラやオイスターや鹿肉を食べるらしいが、そんなものはさすがに持ってこれないから、今年はバゲットとチーズで我慢ということになったらしい。


食べ終わると、夜は街の教会へ行くことになった。24年間生きて(そのうちの16年がヨーロッパ) 、クリスマスで教会へ行くのは初めてだったし、そもそもミサに出席すること自体が初めてだった。すべてカントン語で行われ、なんともいえない絶妙な体験だった。

小雑誌が配られ、カントン語を読んで歌うのだが、漢字の日本語の音読みで適当に合わせて歌ってみた。たまにほとんど同じ音だったのが興味深かった。だが、それも30分くらいするとあきてしまい、まだ大分残っていたので、友人に外で待っていると言って教会を出た。

コンビニでジュースを飲んでこようと思って歩き出したのだが、クリスマスのせいで道路が一歩通行になっており、ものすごい混み具合だった。

逆戻りもしてはいけないので、とりあえず進むしかなかったのだが、本来なら5分もかからないのに、コンビニまでたどり着くのに1時間くらいかかった。帰り道はそこまで混んでおらず、すぐに戻ってこられた。

ミサはまだ終わっていないようだったが、友人の姿がなかった。
「イェス様のご子孫、われわれの典礼に参加しに参られたのですか?」と尋ねる、長い白いドレスを着た中国人に聞かれた。
「いや、友達を探してるんです」
「外国の息子方でしたら、途中まで典礼に参加されていたのですが、さきほど帰られました。貴殿に幸運がありますように。アーメン」
「どうもありがとー!」

 仕方ない!それならNくんの家まで戻って、彼らの帰りを待つしかない。ところが、急ぎ足で街を歩いていると、なんと彼らにばったり!ミサがあまりにも長く、カントン語だから歌おうにも歌えないからということで帰ることにしたらしい。
帰り道、酔っ払ってもいないのに彼らはひたすら大声でフランス語のクリスマス歌を歌っていた。
「きっと君は来ない♪」という僕の静かな鼻歌はもちろん誰の耳にも響き届かなかった。

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